現在、三重県においてニルセビマブというお薬(RSウイルスに対する抗体薬)の効果を検証する研究を実施しております。
赤ちゃんがかかりやすい「RSウイルス感染症」について、そして、この病気から赤ちゃんを守るためのお薬(ニルセビマブ)に関する研究についてご説明します。
(1) RSウイルス感染症ってどんな病気?
RSウイルスというウイルスが原因で起こる、主に鼻やのど、気管支などの呼吸器の病気です。特に赤ちゃんがかかりやすく、かかると気管支の細い部分(細気管支)や肺に炎症が起こりやすいのが特徴です。
(2) かかるとどんな症状が出るの?
ウイルスが体に入ってから症状が出るまでの期間は、だいたい2日から1週間(通常は4~5日)です。
- 初めてかかる赤ちゃんの場合:
- はじめは鼻水や咳など、風邪に似た症状が出ます。
- その後、ゼーゼーするような苦しい咳など、より重い呼吸器の症状が出ることがあります。38℃から39℃くらいの熱が出ることもあります。
- 実は、2歳になるまでには、ほとんどすべてのお子さんがこのウイルスにかかると言われています。そのうち、約4人に1人から半分近くのお子さんに、気管支炎や肺炎のような症状が見られます。
- 特に、1歳未満の赤ちゃん(中でも生まれて6ヶ月よりも小さい赤ちゃん)、心臓や肺にもともと病気があるお子さん、予定より早く生まれたお子さんがかかると、息が苦しくなるなど重い症状になりやすく、入院が必要になったり、呼吸を助けるための特別な治療が必要になったりすることがあります。
- 赤ちゃんの場合、息を吐くときに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった音(これを「喘鳴(ぜんめい)」と言います)が出るのが特徴的です。これは、細気管支炎という状態のサインです。
- その他にも、呼吸がとても速くなったり、息を吸うときに胸がペコペコへこむような呼吸(これを「陥没呼吸(かんぼつこきゅう)」と言います)が見られたり、肺炎になったりすることがあります。
- 生まれて間もない赤ちゃんや、生後2~3ヶ月くらいの赤ちゃんでは、一時的に呼吸が止まってしまうこと(これを「無呼吸発作(むこきゅうほっさ)」と言います)もあります。
- かかったことがあるお子さんの場合:
- 一度かかった後でも、またかかることがあります。その場合は、気管支炎や肺炎のような重い症状は少なくなり、鼻水や咳といった風邪のような症状が多くなります。
- 中耳炎(耳の病気)を一緒に起こすこともあります。
(3) 赤ちゃんをRSウイルス感染症から守るための研究にご協力ください
- 研究の目的: この研究は、三重県にお住まいで、2024年11月1日から2025年10月31日までに生まれる、もともと大きな病気のない健康な赤ちゃんを対象としています。できるだけ多くの赤ちゃんに「ニルセビマブ」というお薬(RSウイルスに対する抗体薬)を注射で接種していただくことで、三重県内でRSウイルス感染症にかかる赤ちゃんを減らすことを目指しています。 そして、このお薬を使っていない他の地域と比べて、三重県でRSウイルスにかかる赤ちゃんが実際に少なくなったかどうかを調べることで、「ニルセビマブ」がRSウイルス感染症を防ぐのにどれくらい効果があるのかをはっきりさせたいと考えています。
- お薬(ニルセビマブ)について:
- 「ニルセビマブ」は、予定より早く生まれた赤ちゃんや、もともと病気のある赤ちゃんには、すでに健康保険が使えるお薬で、お子さんの医療費の自己負担はありません。
- しかし、今回の研究の対象となる、もともと大きな病気のない健康な赤ちゃんには、今のところ健康保険が使えません。
- このお薬は、赤ちゃんの体重によって使う量と費用が異なり、通常は体重5kgまでの場合は約46万円、体重5kg以上の場合は約91万円と高価ですが、この研究にご参加いただく場合は、無料で接種できます。
(4) 研究を行っている場所
この研究は、三重大学医学部附属病院が中心となり、三重県内のほとんどすべての産科、小児科の病院やクリニックで協力して行っています。
皆さまのご理解とご協力を、どうぞよろしくお願いいたします。
ご不明な点がありましたら、どうぞお気軽におたずねください。